| Chelsea Flower Show 2001 | |||||||||
| 吉田 昌弘 | |||||||||
| (平成13年度伝統庭技研修会講義要録より) | |||||||||
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| この庭園の展示目的は、庭園やこれにまつわる日本文化を、イギリスをはじめとするヨーロッパの人々にできるだけわかりやすく紹介し、可能な限り理解してもらうことにありました。 一口に日本庭園といってもさまざまな切り口がありますが、“ショー”であり鑑賞が中心であることから、庭園そのものの形態による「様式」及び「変遷」を軸に展開する展示内容とすることが適切と考えました。 このため、古代から現代にも見られるさまざまな様式の中で、「池泉式」「枯山水」「露地」の三つの様式とその変遷を紹介することが、わが国の庭園の大要を表現するにふさわしく、かつ理解されやすいのではないかと考えました。 |
もちろん、池泉廻遊式や平庭、築山という区分・様式もありますが、これは、技法上、上の三つの様式の内に表現し得ることですし、また敷地条件(23m×11mの長方形)からしても、この三つの様式に焦点を当てることが適切だと考えました。 そこで「池泉式」から「枯山水」、「枯山水」から「露地」へと時代を追って影響を与えてきた(言い換えれば伝統を受け続いできた)日本庭園の歴史・変遷と、これにまつわる建築、工芸、書道、華道等の文化も合わせて紹介することにしました。 |
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| 1)空間構成 | |||||||||
| 敷地の規模・形状からすると、東西方向に三つの様式の庭を配することになりますが、時代の変遷を考えれば、「枯山水」を中心として左右に「池泉式」「露地」という位置関係にすることが適切です。 しかし、三つの部分に分かれてはいるものの、全く個別の存在であってはいけません。各庭がそれぞれの様式を踏まえ、特色を有しながらも、相互に調和し全体として一つの庭園として表現することが必要とされるのです。 |
このため、相互の庭の領域界部分では「遮り」「見え隠れ」や「見立て」の配置等の技法を用いることにより、双互間の違和感を払拭し、調和・一体化したものとして把えられるものとしました。 | ||||||||
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![]() 【Chelsea Flower Show 2001出展日本庭園概念図】 |
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| 2)概要 | |||||||||
| (1)池泉式 池泉式部分は、日本の自然景観の特徴を映した「山の景」「野の景」「海の景」よりなっています。雌滝と背後の築山と樹林で「山」の風景を演出し、滝から流れる遣水が大きく曲がり、池に注ぐ一帯の「野」は小面積ながら草花が咲き、ゆるやかな地形の比較的明るい「野」の雰囲気としました。板張りの舞台の眼前には「海」の景が広がり、山の景や野の景など庭園全体を望むことができます。舞台は寝殿造りにおける釣殿の縁に通ずるイメージとし、枯山水側にとっては禅宗寺院等の方丈の廊下の一部に見立てています。 このことにより、上の図のA点からみれぱ、舞台の存在によって枯山水の白砂が視界に入らないため、枯山水そのものの存在がほとんど意識されず、池の水面がさらに奥へ広がっている様に見えるという一種の「遮り」の技法を用いることにより、池泉が敷地の大半を占めている様に見えるのです。また遣水沿いの植栽については、古代の「前栽」をイメージして、草花や野草も用い、自然な情景の演出に心がけました。 |
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(2)枯山水 枯山水部分は、池泉庭園の池と地形的に連続させつつ、白砂で海を表現し、島、岬、背後の山並み等による大観を縮景した庭園です。枯池に配した石は、大海に浮かぶ島に、中の島の石組みや護岸石組みは荒磯や岩礁に、そして背後の築山を山並みに見立てて、自然の厳しさ、力強さを表現しました。また、これらの石組は雄滝、仏の姿や長命の象徴である鶴、亀にも見立てられます。庭のほぼ中央に中の島を中継して石橋を設けることにより、庭全体の景観を引き締めるとともに、奥行き感も表現しました。さらにこの石橋は、池泉庭園から露地に至る伝いをも兼ねています。 上図のB点から見れば、池泉式とは逆に、池泉式の池が視界に入らず、築山と背後の樹林を背景にした大きな枯山水庭園として目に映ります。 |
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| (3)露地 露地部分は、露地風をベースにした庭園と建築、及びこれにまつわる日本技芸を駆使し、特に庭園・建築にみられる日本文化特有の自然観と審美眼、また各種工芸にみられる自然素材を活かした風雅で繊細な創作技法によって表現しました。この庭は、庵とこれに付随する土間及び露地等で構成し、「見え隠れ」「生け取り」「隅み掛け」等、露地に多くみられる技法を随所に用い、様々な景が展開する構成・デザインとしました。 庵は、屋外と屋内が連続一体化した建築で、屋内は数寄屋風で、外観はひなびた草庵風とし、竹工芸、和紙工芸等、日本の様々な工芸作品・技法を紹介しました。また庵に、扁額、掛け軸、置き床等をしつらえ、書道、華道、香道等の他、陶芸、木工芸、表具工芸等も紹介しました。庵の外側は、壁面や土間等に笠、蓑、石臼さらに道標等もしつらえ、人目を惹き付けながら、野趣豊かな日本の田舎・田園の風情を演出しました。 |
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露地は、内露地と外露地を四つ目垣等で仕切り、内露地は蹲踞と燈籠、飛石等で構成し、外露地は土間と一体化した空間で、井筒を設ける等、素朴でかつ寂びた空間としました。外露地につながる土間からは庵の障子を額縁にして白砂に浮かぶ花筏が「生け取り」の景となり、また、御簾を通してのモミジのシルエットが柔らかく浮かび上がる意匠としました。 庵の南側の円形の白砂敷一帯は、庵の裏庭的なもので、隣接する枯山水とは全く違った位置づけの空間です。整円形に砂を盛り上げ、反射光を部屋に注ぐのが主たる目的なのです(花筏が浮かぶ生け取りの景は、本来はこの空間の副次的活用に過ぎません)。 したがって双互に隣接する庭の意図からすれば本来ならば物理的に境界部分で遮断すべきなのですが、そうすれば庭全体の"調和・一体性"からはずれることになります。そこで、植栽(モミジ等)による「見え隠れ」や、地形づくりによって、それぞれの空間領域を保ちつつ違和感なく景が連続・展開する空間としました。 |
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